IDE

IDE(Integrated Drive Electronics)

 PC互換機用ハードディスクインターフェイスの1つ。 IDEという言葉が初めて使われたのは、'86年の初期、CompaqWestern Digital、CDC(Control Data Corporation。このCDCのMagnetic Peripheral部門はその後Seagateに吸収され現在に至る)がCompaqの新製品に組み込むハードディスクを共同で開発したときにさかのぼる。この開発目的は、ディスクの信頼性と生産コストの削減のために、CDCのディスクにWestern Digitalのコントローラを組み込むというものだった。Western Digitalは、IBM PC/ATのディスクコントローラとして採用されたWD1002の開発元である。これら3社によって開発されたハードディスクと、ホストとのインターフェイスIDEと呼ばれることになった。ただしこのディスクは、ディスクコントローラとディスク本体が物理的に一体化しただけで、回路的にはそれぞれ独立したものだった。このディスクは、CompaqのDeskpro 386で採用され、製品化された。

 同年Compaqは、Conner Peripheral(以下Conner)とも共同で同様のディスク開発を開始する。こちらはディスクインターフェイス−ホスト間のインターフェイスをST-506と上位互換にしながら、ディスクインターフェイスとディスク本体の回路をゲートアレイとして完全に一体化するものだった。このとき開発されたディスクは、CompaqのPortable IIIで製品化されることになる。現在一般にいうIDEドライブの起源は、このConnerが開発したドライブといってよい。

 IDEドライブの元になったWD1003は、PC/ATに採用されたディスクコントローラの上位互換チップで、ATのBIOSで直接コントロールできるという特徴を持つ。SCSIドライブのように、特別なソフトウェアドライバは必要ない。この簡便さがIDEの大きな魅力の1つである。

 IDEで利用する信号線は、ISAバスのそれをほぼそのまま利用している。接続には簡単なアドレスデコーダ(1bit単位のアドレス信号をまとめて、指定されたアドレスを読み出す回路)とバッファ程度があればよい。このため一般にIDEコントローラとして販売されているカードは、極めて低価格である。大手メーカー製品では、マザーボード上にオンボードIDEインターフェイスを持たせるものが多い。IDEインターフェイスでは、1つのコントローラに2つまでのIDEドライブを接続することができる。Connerの成功によって、その後多くのドライブメーカーがIDE相当のドライブを一斉に開発することになる。しかしIDEが誕生した当初は明確な標準規格はなく、各ドライブメーカーはそれぞれ独自の機能拡張などを行なった。このため初期のIDEドライブは、異なるメーカー製品同士での互換性問題が発生した。

 このような問題を回避するため、'88年に各ドライブメーカーが集まり、CAM(Common Access Method)という委員会を発足して標準規格の制定を開始した。そして翌年、委員会は標準化案を発表。標準化案の名称は、ATA(AT Attachment interface)と呼ばれた。この標準化案はその後、ANSIに提出され、'91年に最終的なANSI準拠の規格案として認定された。現在この規格は、ANSIのX3T92というグループによって管理されている。X3T92は、SCSIの標準化を行なっているグループでもある。

 さらに先ごろ、IDEの規格を拡張し、データ転送能力の向上やサポートデバイスの増加、ディスク以外のデバイス(CD-ROMドライブなど)のサポートを行なえるようにしたEnhanced IDEと呼ばれる規格が策定された。